2023年度 基本方針

一般社団法人伊那青年会議所2023年度基本方針

HUMAN

「新日本の再建は我々青年の仕事である。」

   日本における青年会議所運動は戦後、東京にはじまり75年の歳月を経て、現在704都市で活動をするまでに発展をとげました。私たち一般社団法人伊那青年会議所(以下伊那 JC)は、スポンサーJCである飯田青年会議所、隣接の駒ケ根青年会議所の助力により、日本で383番目の青年会議所として承認され、1968年、長野県内10番目の青年会議所として正式に発足しました。2023年の現在に至るまで、幾度となく起こる社会や環境の変化に対し、時には手法や表現を変えながら55年の歴史を築き上げてきました。これから私たちが新たな歴史を築いていく社会を見つめてみましょう。兼ねてより深刻な環境、人権、教育、経済などの問題に加え、新型コロナウイルス感染症による活動自粛、それに呼応するかのように凄まじいスピードで進化するテクノロジーで世界中が、日本が、活動圏域である伊那市、辰野町、箕輪町、南箕輪村が、今まさにかつてない大きな変化の時に立たされています。歩みを止める時ではありません。私たち伊那JCはこの変化の先にある未来の「社会と人間の開発」、「明るい豊かな社会を実現」を目指し、次代の担い手としての大きな責任を胸に、推進力にならなければいけないのです。

   活動自粛や行動制限などにより、増加した在宅勤務やオンライン授業などは人々の生活をより便利なものにした半面、外出や外食、催事など、人と人の直接的なコミュニケーションの場を減少させました。その結果、元来、直接的なコミュニケーションにより生まれる人間関係の構築機会を失い、希薄化が進んでしまっています。コロナ禍以前より、この「人間関係の希薄化」は問題とされていましたが、この3年でより深刻になってきたように思えます。なぜ、「人間関係の希薄化」が問題視されるのでしょうか。それは、個人や家族を越えた人と人のつながり、人間関係が無くてはできない「地域での暮らしや文化、課題解決」があるからです。冠婚葬祭や福祉、教育といった生活に関する相互扶助、芸術や工芸、祭といった歴史と伝統文化の維持と継承、地域全体のまちづくりに対する課題解決などは、個人や家族だけでは成しえない、地域で暮らす人々が互いに協力し助け合ってできる事なのです。行動制限や活動自粛の緩和が起こる今、改めて直接的なコミュニケーションの場、そこで生まれる人と人のつながりを地域での暮らしや文化、課題解決に活かす機会を設けることが必要です。

   大きな社会変化の中、持続可能な地域を作り上げていくには、伊那JCの会員、そして活動圏域に暮らす人々の存在が必要不可欠であり、またそのすべての人々に対しての人づくりが求められます。人づくりには3つの重要な点があると考えます。
1つ目は、多様な価値観や考え方に触れることです。現在の社会によって生まれる多種多様な価値観や考え方に触れることで、それ自体を知ることはもちろんのこと、そこから先の物事への視野の広がりや理解力が深まります。
2つ目は成功も失敗も肯定的に受け入れることです。日々の日常を過ごす中、あるいは新しいことへの挑戦の中における成功体験も失敗体験も肯定的に受け入れ、振り返りながら実体験として積み重ねていくことで、その先の未来における困難に立ち向かった際の達成率や成功率は格段に高まります。
3つ目は、活動圏域への愛着を育むことです。それぞれの地域の歴史や特色を再度学び、その魅力を再発見することや、地域課題へ取り組む中での体験、その成果を共有し合った仲間との経験やその時の記憶、感情は地域への愛着となります。これはその地域に暮らすというアイデンティティを確立させ、誇り、自信に繋がります。この地域に生まれ、暮らし続ける人もいれば、ライフスタイルの変化などにより離れることを選択する人もいるでしょう。地域への愛着、誇り、自信があることはその選択をする中で、大きな判断材料になると思います。
これら 3 点を踏まえた人づくりは、世代、性別を問わず、地域に暮らす様々な人々に提供されることが大切です。そしてその機会を作ることができるのは私たち伊那JCなのです。

   この3年、新型コロナウイルス感染症の影響から直接的なコミュニケーションを著しく制限した社会環境となりましたが、おかれた環境下と技術革新によるリモートのコミュニケーションが急速に発展しました。私たちは学びを得ながらこの変化に適応し、新たな手法を得る事ができました。活動の歩みを止めず進み続けることができた一方で、会員間の対面による直接的なコミュニケーションが減った事はJC活動への積極的な参加の意識や意欲を低下させてしまったように思えます。また、新しく入会をしてくれた仲間に対しても十分なコミュニケーションが取れているとは言えず、組織内の人間関係の希薄化も深刻です。新たな手法を使いながら困難をプラス転換していかなければならないのに、これでは本末転倒です。今まで以上に会員間での意思疎通を図り、学びとやりがいを得られる組織へと進化させていかなければなりません。そのためにも会員一人ひとりがJC活動・運動をよく理解した上で例会や事業に参加し、変化の激しい時代でも青年会議所の在り方を考えていくことが必要です。そして会員同士で議論を重ねる事で仲を深め、強固な組織へと成長させていきます。豊かな社会を実現するためには、その時代にあった手法や組織の在り方を進化させる必要があります。

   豊かな社会の実現のためには私たち伊那JCとそのJC活動・運動を多くの人に知ってもらい理解していただかなければなりません。そのためには私たちの存在や活動を地域の方々へ発信しなければなりません。しかし年々情報技術は進化し、手軽に発信できるツールも増えたことで現代社会にある情報量は把握しきれない程に溢れ、常に更新されています。このような中で様々な情報に埋もれることなく、私たちの存在や活動を届けるためには、無駄と思わず発信し続けることが重要です。その地道な活動が伊那JCの情報の拡散につながり、我々の住む地域から日本全国へ影響を与えることができると考えます。また、広報活動は対外に向けてのものであると同時に、私たち自身のやりがいや、達成感に繋がります。私たちの活動を知ってもらい評価を頂くことができれば、それは私たちの原動力にもなります。

   私たち伊那JCは、伊那市、辰野町、箕輪町、南箕輪村の 4 市町村を圏域とした組織です。人口減少や市町村合併など様々な経緯により、現在の当団体の姿、名称になりました。これは「活動圏域や会員が広がった」と単純に考えられることではありません。それぞれの歴史と文化を持つ活動圏域、そしてそこに暮らす人々の豊かな社会の実現を担う団体、それが伊那JCなのです。果たしてその担いが全活動圏域に行き届いているでしょうか。活動圏域が広がったことにより私たちのJC活動が届き切らないこともあったかと思います。またその状況下に拍車をかけた新型コロナウイルス感染症。動きたくても動けない、悔しい思いをこの3年間たくさんしてきました。今一度私たち伊那JCの活動圏域に対する存在意義、そして何ができるかを見つめなおすことが必要です。そこで大切にしたいことは会員一人ひとりがこれまでに培ってきた経験や知識、人脈、そしてそれぞれが持つ同じ志です。どんなに革新的なことを提供していこうとしても、受け手の人々の暮らしや背景を理解しているかいないかでは説得力と浸透力は変わります。4市町村で暮らしてきた会員それぞれの経験と知識、人脈を共有し合い、それぞれの市町村の歴史や文化をより深く知ることで、私たちがこれから取り組む伊那JCの活動より一層精度を高めることができます。そして会員一人ひとりの活動圏域のためを願ってJC活動をするという同じ志が必要です。暮らしてきた地域は違えども、同じ志を持った青年が結集した熱量は計り知れません。それは先輩方の創り上げてきた伊那青年会議所の歴史を振り返れば分かる通りです。私たち伊那JCだからこそできるJC活動をしてまいりましょう。
以上の想いを、市町村名を冠する委員会名へ込めました。その名に恥じることなく、4 市町村それぞれに届く活動を実現していかねばなりません。それぞれの歴史、文化、そして人々を知りながら、求められていること、あるいは我々自身がその地に求める未来につながる活動を提供していきましょう。

   いつの時代も青年は青年としての役割を果たし率先して社会の変革に貢献してきました。 2023年もそれは変わることはありません。私たち現会員には先輩諸氏から受け継いできた経験や知識、実績があります。一個人、一企業では出来ない事に仲間達と自分の力を信じて挑戦していきましょう。それが自己の成長となり、私たち一人ひとりの明るい未来から地域の明るい未来に繋がっていくと信じています。そして、私たち自身が活動・運動の意義をしっかり理解し、JCを知らない青年達にその魅力を伝え、JCという組織に関わってみようという形で私たちの仲間になってくれれば、地域への影響力は計り知れないものとなっていくはずです。この伊那青年会議所という団体の活動・運動を通して仲間を増やし時代の変化に負けないよう成長していきましょう。明るく豊かな社会の実現のためには「人の力」が必要です。